これはただの日記

なにも考えていないようだ

Engineering Manager になってから身に沁みた12のアイデアと言葉 part3

今年も書きます。

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能力主義パラドックス

自分が客観的で公正な人だと信じてしまうことで、偏向した行動をとってしまう現象を「能力主義パラドックス」というそうです。

韓国で16万部超のベストセラーとなった『差別はたいてい悪意のない人がする』では、全員に同一の基準を適用することが、だれかを不利にさせてしまう間接差別の例について紹介されています。

だれに対しても同じ基準を適用することのほうが公正だと思われるかもしれないが、実際は、結果的に差別になる。司法書士試験で、問題用紙・答案用紙と試験時間をすべての人に同一に設定すれば、視覚障害者には不利になる。製菓・製パンの実技試験において、すべての参加者に同じように手話通訳を提供しない場合、聴覚障害者に不利である。公務員試験の筆記試験で、他の受験生と同様、代筆を許可しない場合、高次脳機能障害の人に不利である。

自らの公正や当たり前を疑う必要性を考えられさせられるエピソードで「自分は差別とは無縁だ」と思い込む怖さを思い知りました。また、仕事においても、自らが一部の世界しか見えていない可能性を考慮し、周囲とあらゆる問題や前提について、対話したい意志を明示しておく重要性も同時に感じます。

参考書籍: 『差別はたいてい悪意のない人がする』

金銭的インセンティブに何ができるか?

金銭的インセンティブは、社員に対して組織が何に価値を置いているかを示す経営メッセージです。金銭的インセンティブが導入されたからといって社員の能力が一気に高まるわけではなく、努力の方向性を動機づけることができるのみです。だからこそ導入にあたってはいくつかの前提を理解しておかないと、期待していない方向に組織を導くことに。

事実に基づいた経営―なぜ「当たり前」ができないのか? 』では、金銭的インセンティブがうまく機能する例とそうでない例が紹介されています。

まずはうまく機能しなかった例です。

電力会社のコストや単価は短期的には決められているので、業績はどれだけ電力を売ったかで決まり、そして売上は主に気温で決まる。フロリダの夏が暑ければ暑いほど電力が消費され、電力会社は儲かる。その夏は特に暑かったので、カリフォルニアのスタンフォードにやって来た夏のその幹部の報酬 は大幅にアップした。彼は、このインセンティブシステムは何の意味もない(フロリダの気候をコントロールできるなら別だが)と漏らしていた。

インセンティブが効果的な動機づけにつながるのは、社員の能力や知識の違いが業績の違いにつながるということも含め、いくつかの前提が成り立ち、インセンティブを受ける社員が業績結果を左右できるときだけである。もし、業績が社員のせいでなかったり、社員の努力が業績につながらなかったりというように、前提が成り立たなければ、大きな金銭的インセンティブによってやる気が上がったとしても、業績には何の結果ももたらさないし、もたらしようがない。金銭的インセンティブをめざして一生懸命働いたのに、結果が出ないのを見た社員は、逆に欲求不満、不幸になり、やる気をなくす。

次にうまくいった例。

一九九〇年代にコンチネンタル航空が企業文化とサービスの改革を行い、オンタイムフライトで最下位から一年でトップに躍り出たとき、会社は運輸省調べのオンタイムフライトで上位半分にランクされた月には、六五ドルのボーナスを社員に支給した。この報酬は社員のやる気をアップさせたばかりでなく、毎日オンタイムに到着したフライトをテレビモニターで発表することとあわせて、会社はオンタイムフライトが本当に大切だと思っていると社員に対して知らせたのである。顧客サービスに対する研究では、はっきりとしたシグナルを出すことで高い効果をあげることがわかっている。航空会社のオンタイムフライトの調査では、トップが本当に大事だと思っているかどうかが、実際のオンタイムフライトができるかどうかの最大の要因であるという結果が出ている。

金銭的インセンティブは諸刃の剣。小さな影響範囲まで意識して利用しないと、間違った行動を動機づけしますし、制度自体が経営メッセージになるので、人材に与える影響も多大です。間違った人材を招き入れ、正しい人材を遠ざける制度になっていないかを意識しつつ、採用したいものです。

参考書籍: 『事実に基づいた経営―なぜ「当たり前」ができないのか?』

ROSS(Review of Social System)と6つのカテゴリ

ROSS(Review of Social System)は、各個人の動機づけ構造を包括的に評価するための手法。以下6つのカテゴリによって構成され、人によってそれぞれの関係性や重視度合いが異なります。

  • 社会
  • 職業
  • 子ども(家族や親戚を含む)
  • 収入(および、その他の物的リソース)
  • 能力(健康も含む)
  • 愛情

一つのリソースを獲得する能力を費やそうとすると、ほかのリソースに割く時間と労力が減少します。そしてカテゴリごと、またはカテゴリ同士が複雑に絡み合って不安や喜びが生まれます。

組織のマネージャーは仕事に関わる支援を行いますが、だからといって毎日幸せに働き続けてもらうことを包括的に支援できるわけではないことを、ROSSは分かりやすく示していると感じました。

仕事・私生活をスパッと完全に切り離すことは難しく、1on1等での話題も仕事に限らないことも多いでしょう。しかし、だからといってマネージャーが無理に、仕事に関係するほかの要因まで含めたサポートを提供しようとする必要はありません。人間が置かれている状況は多様であり、自身がすべてを把握して対処にあたるのではなく、早期に専門家の力を頼ることが大事。

書いてみると当たり前に思える話ですが、責任感の強い人ほど陥りがちな罠かもしれません。

参考書籍: 『なぜ心はこんなに脆いのか:不安や抑うつ進化心理学

習慣化の失敗を防ぐ4つの問い

2021年9月に発売された『何もしない習慣』は、自らの心身のコンディションを整えるにあたって休むことの大切さを気づかせてくれる良書でしたが、習慣化についても言及があり、マネージャー業としても非常に参考になります。

以下4つの問いに従うことで、習慣化の失敗を防ぐことができると著者は説きます。

  1. その習慣はほかの充電を奪っていないか?
  2. 条件が揃わないとできないことではないか?
  3. アクションの段階は多すぎないか?
  4. 漠然としたことを掲げていないか?

「1. その習慣はほかの充電を奪っていないか?」:書籍テーマが「休む」であるため、充電という表現が使われていますが、チームの習慣化を例に考えると、チームのほかの大切な時間だと考えると良いでしょう。新しい取り組みをはじめる際に、既存の良いものが失われてしまうのであれば、無理に置き換えるのではなく、充電の「リスト」として扱うと良いとも書籍に書かれていました。

「2. 条件が揃わないとできないことではないか?」「3. アクションの段階は多すぎないか?」:書いてあるとおりですね。過去に、運用コストの大きい取り組みを推進し、チームにうまく定着しなかった経験を思い出しました。具体的には、チームの健全さに紐づく指標を定義し、定期的に計測・評価する取り組みでしたが、手動集計が必要でした。計測は大切だし、必要な計測はどんどんやるべきですが、計測自体にかけるコストを軽視すると、もっとも大切な継続ができなくなってしまいます。今一度、アクションの段階や手間について意識してみたいものです。その一方で「アクションの段階が多い、手間がかかるものはやらない方が良い」わけではなく、「そのプロセス自体を楽しめるのであれば良い」旨も書籍では言及されていました。独りよがりにならず、チームで前向きに取り組めるものをやっていきたい。

「4. 漠然としたことを掲げていないか?」:ただただ耳が痛い。OKRのフレームワークがあらためて参考になりますね。

参考書籍: 『何もしない習慣』

多様性の恩恵は個人の中にも当てはまる

「多様な意見」はなぜ正しいのか 衆愚が集合知に変わるとき』は複雑系研究の俊英、スコット ペイジが記した多様性研究分野の名著。本書では多様な意見(書籍内では「観点」「ヒューリスティック」「解釈」といった表現が登場します。)が一様な物事の見方を上回るメカニズムやその条件について言及されていますが、「多様性の恩恵は個人の中にも当てはまる」はその中で登場するキーワードです。

第二のメッセージは、多様性の恩恵は個人の中にも当てはまるということである。より大きな貢献を果たすには、多様な観点とヒューリスティックを身につけるべきだ。これらのツールは多様でなければならないが、多様すぎて互いに組み合わせられないようではいけない。さらに集団として多様であれば、集団としてもっとうまくやれるだろう。最もふさわしいのは、多様性が多様であること、すなわち多様な人もいれば専門化した人もいて、それでも全員が数多くのツールを持っていることだろう。一人の人が持つツールが多ければ、その人はより多様になることができ、より興味深い観点やヒューリスティック、そして観点とヒューリスティックの組み合わせを持つことができる。矛盾するようだが、多様であるための最良の方法は、能力を伸ばすこと、つまり数多くのツールを持つことなのだ。

昨今よく聞く多様性という言葉からは、アイデンティティが多様であることを連想しがちですが、そもそも多様性が組織にとって是とされるのは、観点やヒューリスティック、観点とヒューリスティックの組み合わせの多様性が組織の成果を大きくするからです。(書籍内ではこのメカニズムや条件についても細かく言及されているのですが、それはさておき。)多様性を確保するために、多様な経験、訓練、アイデンティティを持つ人たちで組織を構成することは重要ですが、今いる個人個人がより多くのツールを身に着ける努力も同時に必要。

また、集団の多様性を最大限に活かすヒントとして「交わり特性」というキーワードも書籍内では登場し、次のように言及されています。

ローカル・オプティマムによってソルバーを特徴付ければ、多様性が一様性に勝るという発見の根底にある事実が明らかになる。その際には、二人がローカル・オプティマムで立ち往生するのは両方が立ち往生したときだけだという、"交わり特性"が効いてくる。回りくどく聞こえるが、字面よりも奥深い。人々の集団にとってのローカル・オプティマムだけが、集団内の全員にとってのローカル・オプティマムである、ということを意味する。

交わり特性:ソルバーの集団にとってのローカル・オプティマムの集合は、一人ひとりのローカル・オプティマムの集合の交わりに等しい。

書籍を読んでいない方にとっては「なんのこっちゃ」かもしれませんが、問題解決にあたる人同士の意見が適切にぶつかり、お互いの意見がお互いの意見を進化させている状態をイメージいただくとよいでしょう。多様な意見同士の関わり合いをデザインすることで、はじめて真価を発揮するということですね。少数の人間が議論を牛耳っているようでは、多様な意見を活かすことができません。

参考書籍: 『「多様な意見」はなぜ正しいのか 衆愚が集合知に変わるとき』

共有知識効果と、認知の中心、認知の周辺

共有知識効果とは、集団の多くが知っている情報がより重要だと扱われやすい効果のことです。

集団のメンバー全員が共有する情報は、集団のメンバーの一人あるいは少数だけが持つ情報より、集団の決断に大きく影響するという効果である。スタッサーとタイタスはさらに専門的に、これを「一定の情報の影響力は、集団の討議と決断の前にその情報を共有していたメンバーの数に正比例する」と定義している。情報が共有されないと、集団がメンバーの誰よりも多くの情報を所有していたとしても、その決断は個人の決断の平均値を勝るものにはならない。

共有情報を重視する度合いは、集団の人数規模に比例します。つまり、大きな組織であればあるほど、共有情報をもとにした意思決定がなされやすくなるということです。注意すべきは、情報の中身に限らず決断に大きく影響するということ。組織内ですでに共有されてある情報をもとに意思決定が進む可能性が高くなります。この問題に立ち向かうヒントは「認知の周辺」にいる人々との向き合い方を再考することです。

集団のメンバーの中には、自分が持つ情報が他のメンバーと共有されていることで、「認知の中心」となる人物がいるということだ。認知の中心であるメンバーが知っていることは、他のメンバーも知っている。認知の中心となるメンバーは、他のメンバーの全員あるいはほぼ全員と共通の情報を持っている存在と定義される。一方、それ以外のメンバーは「認知の周辺」にあり、彼らの情報は独自のもので、共有されていない。彼らが知っていることは他の誰も知らないが、それが非常に重要な情報である可能性もある。

だからこそ、集団がうまく機能するためには、認知の周辺にいる人々を活かさなくてはならない。こうした人々が重要であるにもかかわらず、ほとんどの集団では認知の中心にいる人々が議論の行方や結論に過大な影響を及ぼす。認知の周辺にいる人々に影響力はなく、議論にも参加しなくなる。これは、集団にとって益にならない。

議論への参加の促し方、会議中の意見の発散と収束の使い分け、色々と活かすシーンが思いつきますね。

参考書籍: 『賢い組織は「みんな」で決める:リーダーのための行動科学入門』

エンゲージメントは「カルチャーに重きを置くリーダーシップ」から生まれる

成長企業が失速するとき、社員に“何”が起きているのか?』によると、エンゲージメントの定義は「求められている変化をどのように捉えるか(否定的・中立的・肯定的)」と「その変化に対してどのくらいの量のエネルギーを発揮するか(低・中・高)」の組み合わせです。

また、仕事をこなすための必要最小限のエネルギーを超えて、従業員自らの裁量で投入するエネルギーを「自由裁量のエネルギー」と呼び、これを最大限に高めることが重要だと説かれています。さらに、従業員のこれらの認識と選択に影響を及ぼすことが、リーダーシップの本質的な役割だとも。

本書の第8章では、リーダーシップ開発を4ステップに分類しており、その最終ステップとして「職場のカルチャーを創る」ことがあげられています。

組織の職場カルチャーに最も強く影響するものは何だろう?答えはリーダーシップである。ほとんどの職場はそのリーダーの個性やマネジメント・スタイルを反映している。

リーダーには、意識しているにせよ、無意識にせよ、最大の影響力がある。その影響力にはさまざまな形がある。何を伝えるか、従業員にどのような責任を課すか、組織の価値観は何か、何が報奨や強化の対象になるか、そして、きわめて重要なことだが、リーダーがどんな模範を示すかである。しかし、従業員がそのカルチャーに賛同しないことには始まらない。従業員の賛同を得られるかどうかは、従業員のエンゲージメントの回復やエンゲージメントの高いカルチャーの維持を大きく左右する。

真に問うべきは次のことだ。

リーダーはカルチャーが自然に生じるに任せているだろうか、 それとも全従業員のエンゲージメントが促されるカルチャーを創ることに 積極的で意図的な役割を果たしているだろうか?

「エンゲージメント」という言葉からは、エンゲージメントを高める人事施策や制度のようなものを連想してしまいがちですが、何よりもまずはリーダーがカルチャーと対峙することに意図的になる重要性が説かれており、ハッとさせられました。

参考書籍: 『成長企業が失速するとき、社員に“何”が起きているのか?』

余談ですが、自然報酬(「意味」「ライフスタイルの選択」「連帯」「熟練」の4群からなる、承認の一形態)の考え方も参考になりました。「ライフスタイルの選択」が多様であることは、なんとなく組織にとって良い影響があるのだろうな、くらいに思っていたのですが、改めて価値が言語化されていて少しスッキリしました。

チームデザインは、コーチングよりも40倍近くパフォーマンスに影響する

2001年に書かれた論文『How Leaders Foster Self-Managing Team Effectiveness: Design Choices versus Hands-on Coaching』では、2種類のリーダー活動「チームデザイン」「コーチング」が、チームの自己管理のレベルやパフォーマンスにどう影響するかを調査した結果が紹介されています。チームデザインとは、チームをどのように立ち上げ、どのような組織のリソースやサポートを提供すべきかを規定する構造を決めることで、仕事そのものの流れや行動規範、チーム構成等が設計対象に含まれます。本論文におけるコーチングとは、チームが自走できるような支援全般をイメージいただくとよいでしょう。

結果はチームデザインがコーチングに比して、自己管理のレベルへの影響は4倍、パフォーマンスへの影響は40倍近くも大きかったそうです。さらに興味深い点として、デザイン、自己管理のレベル、パフォーマンスは相互に依存する点が指摘されています。

Over time, design factors, team self-management, and team performance may become so interdependent that they set in motion a self-reinforcing spiral. In the present research setting, team design is largely in the hands of the teams' immediate managers. These managers could redesign rewards, alter tasks, articulate direction, and provide resources to teams at their discretion. Many team leaders did so-and the better the design conditions they provided, the more their teams were self-managing and the better they performed. But leaders' decisions to provide better design conditions may themselves be influenced by prior team performance. For example, teams well designed enough to perform adequately are more likely to be given additional authority over their work, more support resources, and/or more challenging goals (e.g., Ancona and Caldwell 1992). By contrast, teams with few support conditions tend not to use the authority they do have-nor do they perform well. Leaders may be understandably reluctant to bestow even more resources on those teams, even though that might be just what is needed to remedy their performance problems.

要するに、うまくいっているチームには良いチームデザインが提供され、パフォーマンスをさらに高めるが、そうでないチームには悪いチームデザインが提供され、どつぼにはまってしまうということです。

ハーバードで学ぶ「デキるチーム」5つの条件―チームリーダーの「常識」』では、本論文について言及しつつ、以下のように締めくくっています。

したがってデキるチームリーダーになるカギは、まずチームが置かれた環境を健全なものにすることであり、その上でメンバーがその環境を活用できるよう支援することにあると言えるだろう。

チームが置かれた環境を整えてからでないと、コーチング単体で良くすることには限界があることが分かり、チームをつくる際の責任の重さを感じました。

参考書籍: 『ハーバードで学ぶ「デキるチーム」5つの条件―チームリーダーの「常識」』

Self-Selection

先ほどチームデザインの重要性について言及しましたが、では「良いチームデザインとはなにか?」について様々な視点を与えてくれるのが『Dynamic Reteaming』です。

チームが構成される際には、様々な自由度があります。誰かがすべてを決定することもあれば、チームメンバー同士でトレードするようなこともあるでしょう。そしてチームが構成される際の自由度が低いと、チームで働くメンバーは尊重されていないように感じてしまいます。この問題に立ち向かう一つのアイデアとして、書籍内ではSelf-Selectionが紹介されています。文字通り、メンバー自らがチームを選択するのです。

メンバーの意思を尊重する別の方法として、マネージャーがメンバーの情報収集を行って意思決定するパターンも書籍内では紹介されていますが、人数の増加によって、いつか破綻します。

Sandy Mamoli, coauthor of the book Creating Great Teams: How Self-Selection Lets People Excel, told me about a few different ways that she has seen teams form and reform. These include managers just putting people onto teams at random, and managers forming teams of people based on the skills they have without consideration for the people’s interests, needs, or relationships with others. She has also seen managers work with their people to understand their interests and needs, similar to the stories Andrew shared earlier in this chapter. She does think that manager-formed reteaming breaks down when you reach a larger scale.

In her book she writes that “managers might still know their direct reports’ skills and personalities, but it becomes increasingly difficult to understand the intricacies of relationships among people as the number of relationships increases almost exponentially. In our experience the breaking point is around ten people.”5 Imagine having to do that with 150 people! It was this situation in particular that led her and her colleagues to try something different — the people would be asked to place themselves on teams, which she calls self-selection, as the next story illustrates.

Self-Selectionをうまく機能させるための具体的な進行事例について気になる方は、ぜひ書籍をお買い求めください。

参考書籍: 『Dynamic Reteaming』

測定できる物事だけに囚われるな

エドワーズ・デミング著『The New Economics for Industry, Government, Education, third edition』に記述されている

It is wrong to suppose that if you can’t measure it, you can’t manage it – a costly myth.

は、しばしば「測定できないものは管理できない」の部分のみが切り取られて紹介されます。

「測定できないものは管理できない」と言及する際には、「測定できないものは管理できないので、まずは何事も測定できる状態にしよう」と言いたいことが多いように思えます。しかし原著の文脈を補足するならば、「測定できる物事だけに囚われるな」です。その具体例として、営業のインセンティブが逆効果になったケースや、数値ハックによるマイナス効果が生み出されてしまった例が紹介されています。

マネジメントの仕事では目標のつくり方について考える機会も多いですが、数値目標の設計時には様々な影響範囲について想像を働かせたいものです。

参考書籍: 『The New Economics for Industry, Government, Education, third edition』

エンパワーメントは、結果責任をともなう

True North リーダーたちの羅針盤』はリーダーシップ研究の先駆者ピーター・ドラッカー、ウォーレン・ベニスの後継者ビル ジョージによる名著です。本書ではリーダーシップに求められることは「カリスマ性」より「自分らしさ」だとし、自己認識をどうリーダーシップの発揮につなげていくか?がまとめられています。

本書の後半では、仲間と心のつながりを築けるようになったリーダーが、仲間たちをエンパワーすることについて様々なエピソード・学びが共有されており、「エンパワーメントは、結果責任をともなう」はその一つです。

「エンパワーメント」という用語はしばしば、「思い通りのことをする自由」だと誤解されがちです。実際のところ、本当のエンパワーメントというのは、会社に対する自分のコミットメントを果たすという高いレベルの結果責任と不可分一体なのです。

本書の言葉を借りると、エンパワーメントは結果責任をともなう裁量権の委譲です。裁量を委譲するということは、委譲した範囲で起こった物事の結果責任はリーダーが取ります。だからこそ人々をエンパワーすることで、裁量を正しい方向に動機づけすることは必要ですし、委譲した裁量を存分に発揮してもらうためにもエンパワーメントが必要。「エンパワーで、どんな裁量を委譲しようとしているか?」を意識し、日々のコミュニケーションに活かしたいものです。

参考書籍: 『True North リーダーたちの羅針盤

影響に対して寛容であれ

最後に紹介するのは2021年後半に発売された『Googleのソフトウェアエンジニアリング ―持続可能なプログラミングを支える技術、文化、プロセス』の一節。チームでうまく仕事をするには、影響に対して寛容である必要があると本書は説きます。ここでいう影響とは、他者の意見によって自分の考えを変えること。影響に対して寛容でない態度、つまり相手の意見によって自分の考えを変えないことは一見ブレない人のように感じられますが、実際はその逆のことが起こります。

過ちをおかしたことや自分の力が全然及ばないことを認めると、長い目で見れば自分の信望を高められる。実際、脆弱性を表に出すのをいとわないことは、謙虚さを外向きに示すもので、結果の責任を取れることと、責任を伴うのをいとわないこととを体現している。また、それは他者の意見を信頼していることを示す合図でもある。

皆さんも技術的な意思決定において、「過ちをおかしたことや自分の力が全然及ばないことを認める」難しさは一度は体験したことがあるのではないでしょうか。

できることのうち最善なのが、「わからない」ととにかく言うことである場合もあるということだ。

私はSREとして障害対応にあたる中で「わからない」と言う大切さ、そして難しさを体験してきましたが、それによって周囲からの信頼を獲得できるというのも納得できる気がします。

本書ではさらに、エンジニアリングとは内在的にトレードオフに関するものであり、だからこそ影響に対して寛容であれ、とも言及されていました。

不変の環境と完璧な知識がない限り、全てに関して正しくあることは不可能なので、新しいエビデンスが提示されれば当然考えを変えるべきなのだ。

この言葉はエンジニアリングにおいても当てはまることだと思いますが、マネジメントの仕事においても同様だと感じます。チームの成果を最大化するにあたっての変数は無数にあり、だからこそ自分の考えを変え続ける態度を持ち続ける、つまり影響に寛容であることで、はじめて周囲からの信頼を獲得でき、チームとしてうまく物事に向き合うことができるのでしょう。マネジメントの仕事は少し油断すると、自分の経験や勘、少しの得た情報だけをもとに物事を進めてしまう危険性を持っているように感じており、前提としての心構えの大切さが身にしみます。

そして、影響に対して寛容であると同時に、影響を受け続けられる状態に身を置くことも同時に必要かもしれません。周囲からのフィードバックを集めている姿勢を積極的に打ち出す、周囲との関係性構築をする、自分自身がどう周囲に認識されているかに気を配る、言動の一つ一つが自分自身ひいてはチームのあり方につながっていく。本記事で紹介したほかのアイデアにも共通し、自分の考え方を変え続ける大切さを示してくれているように思えます。まだまだ学ぶことが尽きない。

参考書籍: 『Googleのソフトウェアエンジニアリング ―持続可能なプログラミングを支える技術、文化、プロセス

来年もpart4書くぞ。