前置き
@katsuhisa__ です。このブログに投稿するのは約1年ぶりで、テンションが迷子になっています。いきいきしてるかーーーー!!!!
注: 本記事は「いきいき Advent Calendar 2021」11日目の投稿です。
今度こそ前置き
先ほど Developers Boost 2021 にて、本ブログのタイトルでもある「Job Crafting」について基調講演をさせていただきました。素晴らしい機会をいただき、関係者の皆様には感謝をしております。
さて、講演では私のこれまでのキャリアを振り返りつつ、 Job Crafting をどう実践してきたかをメインテーマとしたのですが、時間の都合上 Job Crafting そのものについて語り尽くすことができませんでした。
そこで本記事では、私が基調講演準備に際して読んだ論文や書籍の内容等をふまえつつ、皆さんに Job Crafting の詳細を共有したいと思います。現在、私の手元には Google Docs 45ページ分のメモがあるので、可能な限り簡潔にまとめられるよう心がけますが、とっ散らかっているかもしれません。まあ、個人のブログなんてそんなもんです。
Job Crafting とはなにか
言葉のとおり、仕事を自ら生み出すことです。より正確に、このアプローチの根底にある思想をふまえた表現をすると「自らの関心事に合うように、仕事を変えよう」ということ。
Job Crafting という用語は、Wrzesniewski と Dutton によって2001年に提唱されました。(※もととなるアイデアは1987年に言及されているとする主張もあります。)以下は、Wrzesniewski が登場する動画で、Job Crafting について具体的な事例をもとに解説されています。
次に Job Crafting への具体的なイメージを膨らませていただける動画をご紹介します。
一見するとピンクのグローブをはめて何やら楽しそうに踊っているだけに見えます。実はこれは乳がん早期発見を訴えるピンクリボン活動の一貫として行われたもので、病院のスタッフが集まり、ピンクのグローブをつけてダンスすることを通じて、世の中に乳がん早期発見を訴えかけている様子です。
Job Crafting が、自らが意味を見出すことで新しい価値を生み出す創造的なプロセスであることがよく分かります。
Job Crafting の理論的枠組みは論文によって異なる
さて、一言で Job Crafting といっても、
- 具体的にどういうものが Job Crafting に該当するか
- また、それはどういった分類をすべきか
は、いくつかの系譜があることが分かりました。
※いくつかの論文のアブストラクトを読んでいくと、国ごとに最適化を試みる取り組みだったりも中にはあり、完全にすべてを統合するのはなかなか骨が折れそうだな、と感じました。ですので、ここで私が紹介する枠組みも、全体の中のほんの一部だとご理解いただけると良さそうです。(「実際は全然違っているよ」「いや、それは古いね」といったことをご存知の方がいれば、 @katsuhisa__ にご連絡いただけると泣いて喜びます。実際にこの分野の研究をされている方との会話に興味があります。 )
1. タスク、リレーションシップ、コグニティブの三分類
私が Job Crafting について調べ始めて、もっともはじめに出会ったのがこの枠組みです。本記事冒頭の動画も、この概念で Job Crafting が整理されています。
https://journals.aom.org/doi/10.5465/amr.2001.4378011
タスククラフトは、仕事の責任を自ら捉えなおし、仕事を変化させることです。
リレーションシップクラフトは、その言葉通り仕事における関係性を変更すること。たとえば、ソフトウェア開発をしている人が、普段会話しないマーケティングチームの人と会話して、開発におけるインスピレーションを得るような状態です。
最後のコグニティブクラフトも、言葉どおり認知を変えることを意味し、仕事をただこなすだけでなく仕事の意味を捉え直すことがこれにあたります。ドラッカーの有名な「三人の石切り工」の話が分かりやすい例ですね。
ドラッカーの有名な「三人の石切り工の昔話」 - 電脳くおりあ
2. 仕事の要求度-資源モデルにもとづく整理
仕事の要求度-資源モデル / job demands–resources (JD-R)は、仕事における資源(例: 裁量、周囲の支援、コーチングを受ける機会)と要求度(例: プレッシャー、負担)のバランスがワーク・エンゲージメントに影響するという関係性を整理したモデルです。
そして仕事の要求度-資源モデルにおける、 Job Crafting の定義を組み立てたのが以下の論文です。
大きく、以下の4つの因子に分解して整理されており、Job Crafting によって仕事の要求度・資源をどのように増減させているかに着目しています。
- Increasing social job resources
- Increasing structural job resources
- Increasing challenging job demands
- Decreasing hindering job demands
3. 1と2のアイデアをもとに、階層構造で整理する
もう一つの整理は、これまで紹介した2つの系譜を統合した階層構造です。私の本日のDevelopers Boostの基調講演資料内では、このモデルをスライドで引用しつつ、お話を進めさせていただきました。
三段階の階層構造で表現されています。
- アプローチ/回避
- 行動/認知
- 要求度/資源
このモデルの詳細については、上記YouTubeの動画または以下の論文をお読みいただくと良いでしょう。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/job.2332
実践の鍵
ここまでで、Job Craftingのいくつかの枠組みをご紹介してきました。枠組みにはいくつかのパターンがあるものの、どの論文にも Job Crafting のアプローチによって何かしらの効果が得られたことが書かれていました。いくつかの論文を読む中での気づきを以下に列挙し、このブログを締めくくります。
- 自己目的化されている
- ボトムアップ型の従業員主導のワークリデザインである
- 正式な承認を必要としない(⇔上司・同僚に受け入れられるゾーンの中で起こる)
- Job Crafting が実践できるかどうかは、リーダーシップのスタイルに大きく影響される
- 同僚にポジティブな影響があり、周囲が模倣するケースも報告されている
- 顧客満足度にもつながる
さいごに
書籍では、以下がよかったです。
少々お高いですが。